





「ピーターとおおかみ」(1936年)は、
プロコフィエフが子ども達のために、
オーケストラの楽器を紹介する為に作曲した
音楽作品です。
原作は勇敢なピーター少年が
狼を生け捕りにするまでを描いたおとぎ話です。
小学生の頃、僕は音楽室で聴いた
「ピーターと狼」が気に入って、
学校から帰る道すがら、
ピーターの曲を口笛で吹きながら
歩いていたような記憶が残っています。
今でもピーターのテーマを聴くと、
少年時代の冒険心が動くのです。
今回のCD付き音楽絵本は、
どこにもない手法(音楽)と
解釈(文)で仕上げています。



オーケストラの楽器ではなく、
中世・ルネサンス時代の古楽器で演奏。
古楽器は音域が狭く、
原曲にある半音階は特に苦手。
プロコフィエフの音楽を
正確に再現することは不可能。
しかし苦手を上手く利用し、
また新たな音のコラージュを加えることにより、
少年ピーターの森が、
より素朴で豊かなものとなった。


「耳をすます」をテーマに
物語や音楽を再構築。
プロコフィエフが書いた
オリジナル台本の最後の一行
「耳をすましてみて下さい。
アヒルが狼のお腹の中で
鳴いているのが聞こえるでしょう…」
このセリフと共に音楽は終わる。
音楽家である彼が子ども達に一番伝えたかったこと、
それは「耳をすます」だったのかもしれない。
この新しい解釈で、
すぎはらけいたろうの絵と
ロバの音楽座の音楽と
松本雅隆の文とが響き合った。


自然との共生を示唆し、
原曲にはないエンディング曲
「かぜはうたう」を収録。
この作品は、原作の
「悪い狼を生け捕りにする」ことに対して
「狼も人間も同じ生き物」というスタンス。
自然との共生を示唆し、
絵本では動物たちと人間が楽しく
お祭をしているページで終わる。
そしてCDでは、エンディング曲
「かぜはうたう」が収録されている。
子どもも大人も自然の音楽に耳をすまし、
ピーターと一緒に口笛を吹きながら、
すぎはらけいたろうの描く
不思議な森の住人さがしを
楽しんで欲しいなと思います。









[ピーター]
Whistle口笛
世界最古の笛。

[おおかみ]
Serpentセルパン
フランス語で蛇の意味。
木製の低音金管楽器。

[ことり]
Recorderリコーダー
英語で「鳥のさえずり」という意味。
古代からあり、バロック時代に
今の小学生が吹いている。

[あひる]
Crumhornクルムホルン
英語で「曲がった笛」という意味。
ルネサンスのリード楽器。

[ねこ]
Chalumeauシャリモ
クラリネットの前身。
ルネサンス、バロック時代に
吹かれていた木管楽器。

[おじいさん]
Rackettラケット
ファゴットの前身。
ルネサンス時代のリード楽器。

ヤギや牛などの皮の袋(bag)に
笛(pipe)がついたリード楽器。

鍵盤付のヴァイオリンのような楽器。
クランクを回し木製の円盤が
弦を鳴らす弦楽器。

Organ オルガン
中世の小型パイプオルガン。
ふいごで笛を鳴らす鍵盤楽器。

gamba ガンバ
ルネサンス、バロック期に
よく弾かれていた撥弦楽器。

中世ドラム、アンティックベル
タンバリンほか

中世の箱琴。
指や鳥の羽で演奏する撥弦楽器。

ギターの前身。
ルネサンス、バロック期に
よく弾かれていた撥弦楽器。

トルコを中心にその周辺国で
弾かれている撥弦楽器。

イランの伝統楽器。
2本のバチで弦を叩いて
演奏する打弦楽器。








ロバの音楽座が
中世の古楽器を使って演奏するので、
絵もできる限り中世の雰囲気が出るように
心がけました。
中世の時代を描いた代表的な画家
ブリューゲルの絵を自分なりに解釈し、
色や構図などに取り入れました。
また、素材が可能な限り
中世の世界感に合うように、
メインのキャラクター達の服は
自分で色を染めた布でコラージュし、
紙と布で立体感のある
新しい質感のコラージュが完成しました。

もう一つこだわった部分は、
物語の本筋とは関係ないキャラクターたちに、
へんてこな生き物をたくさん登場させことです。
現代人は誰も見たことがない中世には、
もしかしたら、こんなへんてこな
住人がいたかもしれないと思いを馳せ、
コラージュのおもしろさを活かしながら、
どこにもない世界を描きました。
絵は一枚一枚、紙や布、
様々な素材を切って貼って制作しています。
コラージュの立体感を印刷で再現するため、
原画を撮影しました。
思わず触ってみたくなるような
ぼこぼことした質感が印刷でも表現できました。

音楽と絵と言葉の詰まったこの作品が、
子どもにも大人にも、
楽しんでもらえることを期待しています。






松本雅隆
ロバの音楽座、カテリーナ古楽合奏団を主宰。
音楽はもとより、作・演出・美術を担当。
第3回キッズデザイン賞・創造教育デザイン部門で
金賞など数々の受賞歴がある。
Eテレ「おかあさんといっしょ」などの音楽を担当。
1980年より子ども達に向けて、
音楽の原点を体験する森の創造学校
「ロバの学校」を主宰。
長年に渡り世界を旅し古楽器の研究を続けている。
また数々の空想楽器を考案、製作している。

すぎはらけいたろう
www.keitarosugihara.com
絵とデザインの仕事を中心に、
近年は空間デザインのアートディレクションなど、
幅広い仕事をてがける。
様々な素材を組み合わせた作品は、
ガラクタを集めたオーケストラのように、
にぎやかで楽しいハーモニーを奏でる。
2018年キッズデザイン賞受賞。
2009年ボローニャ国際絵本原画展入選。


松本野々歩
www.chirindron.com
ロバハウスで音楽と古楽器に囲まれて育つ。
田中馨と共に、
世界のわらべうたを歌いあそぶユニット
「チリンとドロン」や、
子どもと大人と一緒になってあそびを考える
「ロバート・バーロー」として活動中。
アコースティックバンド「ショピン」の
ボーカルもつとめる。
CM歌唱など、幅広い音楽活動の他、
生まれ育ったロバハウスでイベント企画や、
結婚式のプロデュースなどもしている。

ロバの音楽座
www.roba-house.com
1973年松本雅隆により
中世・ルネサンス音楽を演奏する
「カテリーナ古楽合奏団」を結成。
82年子どもたちに音楽の夢を運ぶべく
「ロバの音楽座」を結成。
ロバの音楽座は古楽器や空想楽器などにより、
ファンタジックな音と遊びの世界を繰り広げている。
88年「愉快なコンサート」が
厚生省中央児童福祉審議会の
特別推薦文化財作品に選ばれる。
98年「ジグの空想音楽会」が
東京都優秀児童演劇選定優秀賞受賞。
2004年よりNHKEテレ
「おかあさんといっしょ」などの音楽を担当。
06年ジブリ作品「ゲド戦記」の音楽に参加。
09年第3回キッズデザイン賞・
創造教育デザイン部門において
金賞〈経済産業大臣賞〉を受賞。
11年「らくがきブビビのコンサート」、
16年「森のオト」が
特別推薦文化財作品に選ばれる。

